古書店で働いていた時のこと。東京・神田小川町の源喜堂書店(http://www.genkido.jp/)。接客をしていると、お客さんが購入するかどうか悩まれる、そんな場面に遭遇することがよくありました。「どうしようかなあ、これ買いたいんだけど、結構大きいし、たぶん今すぐ読まないしなあ。」などなど。買いたい気持ちが明らかなお客さんには、こう対応します。「それは買った方がいいですよ。本はね、持っていればずっと待ってくれますから。」
物いふ小箱 / 森銑三著
筑摩書房 : 1988.11
204p : 21cm
森銑三さんの著書は、20代の後半には少し読み始めていた記憶がある(岩波文庫の『書物』など)のだけれど、その時点で「この人の本は、もっと年を取らないと分からないんじゃないかな」と感じていました。でも持って置かないといつしか忘れてしまいそうだったので、少しずつ買いためていたのです(関連書籍所蔵目録「森銑三」)。47歳になったいま、『物いふ小箱』を読み進めていると、何かもう凄すぎて、随所で変な声が漏れてしまう。「ひぇっ」とか。日本近代の言語芸術において、一つの頂点なのではないか、とまで思うのです。